ステンドグラス史 豆知識-第1話-

ステンドグラスのサインについて

                                   田 辺 千 代

 書物には著者名、絵画にはサイン、焼き物や彫刻には銘が。人の手を経て拵えられたあらゆるものには後世の為に足跡・サインが残されています。日本のステンドグラスにもごく稀ではありますがサインがあります。

 京都・柊屋の湯殿(白川女)には小川三知のサインが残っています。

旧尾張徳川家本邸のステンドグラスは4枚組で春夏秋冬をラテン語で現した油彩画のような作品です。デザインは長谷川路可 制作・小川三樹。二人のサインが焼き付けられた非常に珍しい作品です。長谷川路可の制作者を同等に遇した人間性が感じられて清々しい気分になります。

 東京音羽の旧鳩山一郎邸・書斎室の作品に珍しいと言うか、残念と言うか別人のサインが焼き付けられていることに殆どの人は気づいていません。鳩山邸のステンドグラスは建築家・岡田信一郎の依頼を受けて小川三知が制作しました。修復時に岡田信一郎、小川三知の存在を知らぬまま思わず知らず自分の名前を焼き付けてしまったらしい。

建築現場の裏側にはかかわった職人さんたちが思い思いの落書きを残しています。
決して表に出ないところに書きつけるのが職人の流儀と言うものでわきまえています。
ステンドグラスの表面に自分のサインをそれも目立たぬように入れてあるところがいやらしく下卑ています。

今回はサインのお話でした。ではまた。

柊屋 湯殿
京都・柊屋 湯殿
小川三知サイン
左下に小川三知のサイン
旧尾張徳川家本邸
旧尾張徳川家本邸
長谷川路可・小川美樹
長谷川路可・小川美樹サイン
長谷川路可・小川美樹
長谷川路可・小川美樹サイン
旧鳩山一郎邸・書斎