【来訪】横浜市滝頭小学校のステンドグラス

2019.01.27

2018年2月、神奈川県横浜市磯子区にある滝頭(たきがしら)小学校の鈴木輝美先生より、当連盟のフェイスブックページ宛てにメッセージをいただきました。

「滝頭小学校の校内にステンドグラスが設置されているが、その修復をしたのが、国会議事堂のステンドグラスを作った方のお一人である森勇三氏であると文献に残っている。元々どこにあったものなのか、どうして作り直して移設することになったのか、その模様の意味を知りたい。」(原文一部修正)

 日本のステンドグラス研究家の田辺千代先生に、ことの経緯をお伝えしました。田辺先生はいくつもの原稿を抱えご多忙中にもかかわらず、情熱をもってご対応くださいました。

そして2018年10月27日に田辺先生と連盟会員が、滝頭小学校を訪問しました。

メッセージをくださった鈴木先生と他2名の先生方にご丁寧にお迎えいただきました。

たくさんの資料も揃えていただき、貴重な写真なども拝見させていただきました。

それらを見つつ、田辺先生がステンドグラスの経緯をご説明くださいました。
田辺先生は森勇三氏と直接お会いになったことがあり、滝頭小学校のステンドグラスのお話もご本人から伺っていらっしゃったとのことです。

滝頭小学校のステンドグラスについて田辺先生がまとめてくださいましたので、以下に記載させていただきます。
田辺先生、滝頭小学校の先生方、ありがとうございました。

 横浜市立滝頭小学校のステンドグラス

2018年12月5日
田辺千代

大正12年9月1日、関東大震災によって横浜は未曾有の被災地になった。
野毛山の高台から見た横浜の中心地は一面焼け野原になってしまった。
有吉忠一市長(当時)は「横浜復興の百年の計は教育にあり」といち早く子どもたちの為の震災復旧小学校(全31校)の建設に着手した。
落成第一号は大正15年4月の三吉小学校に始まり、昭和5年4月の日枝小学校の竣工をもって完了した。要請にこたえた横浜市建築営繕の学校建築課は復興事業の中核を担い技師・山田七五郎を中心に若き職員たちは自由な雰囲気の中で競い合うように設計に取り組んだという。

  • 敷地は南北に長く、長方形に。
  • 北半分にコの字型の校舎を建て、南半分に広い運動場と体育館(講堂)。
  • 建物は総て鉄筋コンクリート造りの三階建て。
  • 一校に三カ所の階段を儲けること。
  • そのうちの一カ所に斜路(スロープ)を造った。建築費の乏しい中で費用のかかるスロープは余りに贅沢であると反対意見も出されたが、子どもたちの安全を考慮しての計画は実行された。
  • 驚くべきは、正面玄関天井、入り口のドアパネル、昇降口などにステンドグラスが入れられたことにある。震災復旧小学校は老朽化による改築でそのほとんどが姿を消し建て替えられたが、現在も当時のステンドグラスが姿を変えて現存している。滝頭小学校のステンドグラスもそのひとつである。

滝頭小学校は2018年に創立90周年を迎え、現存しているステンドグラスの来歴を知りたいと鈴木輝美先生が「日本ステンドグラス連盟」のホームページにアクセスをしてくれた。10月27日(土)連盟の広報担当の方と学校を訪問、三人の若い先生方と話が弾み、古いアルバムを見せていただいた。アルバムにより天井だけでなく正面玄関のドアパネルにもステンドグラスが使われていたことが判明した。

横浜に現存するステンドグラス一覧
▲横浜に現存するステンドグラス一覧
ステンドグラス
滝頭小学校の玄関に設置されているステンドグラス(森勇三氏修復)。一部が破損し、たわんでいる。
 モノクロ写真は昔の玄関ホール前。
神奈川新聞
▲昭和63年神奈川新聞掲載の森勇三氏のインタビュー。聞き手は田辺先生。
滝頭小学校
▲昭和3年当時の滝頭小学校
滝頭小学校
▲玄関ホールの天井にステンドグラスが入っている
滝頭小学校創立90周年記念学習資料
▲お土産にいただいた「滝頭小学校創立90周年記念学習資料」